
相続時精算課税制度を利用して生前贈与していた建物について、災害により被害が発生した場合でも贈与時の価額を相続時に加算するのですか?
相続時精算課税制度の使い勝手が良くなったと聞いて、活用を検討しています。ただ、何十年も前の贈与について、相続時に加算することを考えると二の足を踏んでいます。たとえば相続時精算課税制度を利用して生前贈与していた建物について、受贈者が所有している間に災害により被害が発生した場合でも、贈与時の価額を相続時に加算しなければならないのでしょうか?
確かにご懸念のとおり、何十年前の贈与であっても相続時精算課税制度を適用した場合には、贈与時の価額を相続時に加算する必要が生じます。ただし、災害による被害については、令和5年度税制改正により、一定の控除が受けられる改正がされています。
相続時精算課税制度とは、贈与を受けたときの贈与税の計算において、自ら選択することで適用することができる制度です。一度選択した後は、暦年課税を選択することはできません。
また、贈与者が亡くなった場合には、相続時精算課税制度を適用した贈与財産の価額(贈与時の価額)の合計額を相続財産として、相続等により取得した他の財産と合算して相続税を計算した上で、すでに納めた贈与税額がある場合には、相続税額から控除して相続税額を算出します。その際、控除しきれない贈与税額があるときは、相続税の申告をすることで還付を受けることができます。
令和5年度税制改正により、相続時精算課税制度が見直されました。ご相談の内容ですと、以下の改正が該当します。
この改正は、令和6年(2024年)1月1日以後に生ずる災害により被害を受ける場合について適用されます。
つまり、令和5年(2023年)12月31日以前の贈与であっても、適用対象となる点に注意しましょう。
ご相談は、相続時精算課税制度を利用して生前贈与していた建物について、受贈者が所有している間に災害により被害が発生した場合でも、贈与時の価額を相続時に加算するのか、になります。
この点は上記2.にあるとおり、一定の被害を受けた場合には、贈与時の価額からその災害による被災価額を控除することができます。
この場合の“一定の被害”とは、その建物の想定価額(※1)のうちに、その建物の被災価額(※2)の占める割合が10%以上となる被害をいいます。
※1 想定価額…その建物の災害発生日における一定の算式により求めた価額
※2 被災価額…被害額から保険金などにより補塡される金額を差し引いた金額(建物の想定価額が限度)
なお、この控除を適用するには、別途手続が必要となります。この他、災害減免法による贈与税の軽減等の適用との重複適用はできないなど、適用に関しては留意点があります。
改正後の相続時精算課税制度に関するご相談は、お気軽に当事務所までお問い合わせください。
<参考>
財務省HP「令和5年度税制改正の大綱」PDF
国税庁HP「令和5年度相続税及び贈与税の税制改正のあらまし」PDFなど
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